コラム

チームしゃちほこの未成熟な声は一種のマジック マーティ・フリードマン★鋼鉄推薦盤

2014年10月17日 07時30分

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 西新宿在住のスーパーギタリスト〝マーティ・フリードマン〟が完全ドルヲタ宣言! 三度のメシよりJ-POPが好きという彼が、お気に入りのアイドルソングを鬼レコメンド!! 今回は、ももクロの妹分、名古屋発のユニット・チームしゃちほこの〝ボーカル〟の魅力に迫ります。

チームしゃちほこ『ひまつぶし』

#09_チームしゃちほこ『乙女受験戦争』


 ボクは日本に来る前から日本の音楽を聴いていたんだけど、一番感動したのが実は『アイドル』というジャンルなんだ。それはなぜかというと、アイドルの音楽って欧米人から見るとすごく特異なものに見えるからなんです。

 たとえば、ももクロの妹分として知られるチームしゃちほこのアルバム『ひまつぶし』はその格好のサンプルと言えるね。

 チームしゃちほこは、メンバー全員がものすごく歌がうまい、というわけじゃない。多くの欧米人はこれを聴いた瞬間、「ん? これはアマチュアのCDか?」と思うんじゃないかな。欧米人、特にアメリカのオーディエンスがプロのシンガーに求めているのはゴスペル風の歌い回しであったり、ロックの伴奏に負けないくらいの声量・テクニックなんだよね。

 つまり、彼らにとってアイドルの歌は「幼い声をした、アマチュア。これは聴くに値しない」と考えてしまう。

 だけどボクは、ちょっとヘンなアメリカ人なので(笑)、その意見には反対なんだ。アイドルの歌声って幼いし、テクニックもあまりない。だけど一生懸命歌っているじゃん? それに心を打たれるんです。応援したくなるんですよ。

 歌が上手い人、たとえば青山テルマさんは確かに最高の歌声を持っている。だけど、聴いた瞬間、「ああ、この人は歌もうまいし、大丈夫だ」って思っちゃう。わざわざ「応援しなければ消えてしまうかもしれない」とまでは思わない。

 つまり、アイドルの未成熟な声にはオーディエンスが「応援したい」「一緒にがんばりたい」と思わせるマジックが含まれているんです。ある意味、高校野球やアメリカの大学のフットボールの試合を応援しているのに近い雰囲気かもしれないね。

 今回のチームしゃちほこのアルバムで言うと、メンバー秋本帆華ちゃんの声はものすごくフニャッとした脱力系の声を持っている。アルバムラストの『乙女受験戦争』の冒頭で「がっばって~、がっばって~」と言っているのが彼女だね。ボクはこの声を聴くたびに「アイドルらしい素晴らしい声だなぁ~」と思うんだ。逆に「君もがんばれよ! 応援するよ!」という気持ちにさせてくれる。

 そして、もうひとつ重要なポイントがある。それはこういう幼いアイドルの声を活かすために、プロフェッショナルなプロデューサーやコンポーザー、エンジニアが集まって、素晴らしいバックトラックを作っているということ。

 プロフェッショナルな楽曲&サウンドに、アマチュアっぽい声を乗っけるという手法は1960年代のアメリカにもあったんだけど(モンキーズなどのバブルガムポップと呼ばれたジャンル)、今はすでになくなってしまっている。こういうカルチャーが今もしっかり残っていて、しかも進化し続けているんだから、日本と言う国は本当にすごい。

 チームしゃちほこのアルバム、そんな視点で聴いてみるとより面白くなると思うよ。

(構成・文/尾谷幸憲)

Marty Friedman
マーティ・フリードマン
ギタリスト、プロデューサー。全米で1000万枚以上のCDを売ったヘヴィメタルバンド「メガデス」に在籍。2004年から日本の音楽シーンでも活躍。ももいろクローバーZ『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』への全面参加。ニューアルバム『インフェルノ』(ユニバーサル)が発売中。月刊エンタメにて誌面版「マーティ・フリードマンのヘドバン★鋼鉄推薦盤[メタルレコメンド]を連載中!

【公式HP】http://www.martyfan.com/
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