FOLLOW US

UPDATE|2015/06/09

乃木坂46山﨑怜奈、舞台『じょしらく』は自分の手で掴んだ陽が当たる場所

5月22日、乃木坂46の山﨑怜奈が12枚目シングルの期間を休業すると発表した。乃木坂46の活動も学業も全力で取り組んでいる彼女だからこその決断。13枚目のシングル期間には、清々しい顔で戻ってきてくれるはずだ。そんな怜奈が休業前に全力でブツかるのが6月18日からはじまる舞台『じょしらく』だ。彼女がこの舞台に懸ける想いはどこまでも熱い。
 


 舞台や映画を観るのが好きで、「女優になりたい」という思いを胸に秘めていた怜奈。しかし、中学生の時に行われたクラスの演劇発表では、自己主張ができずに気がついたら衣装係になっていた。舞台に立つ同級生を羨望のまなざしで見つめるしかなかった。

 そんな怜奈を変えたのは、母親が勝手に応募したという乃木坂46の2期生オーディションだった。特技披露では『チャップリンの英語演説』をやりきって見せた。直前まで何をするのか決めていなかったという怜奈だが、チャプリンが憑依するような熱演だった。

 2013年5~6月の『16人のプリンシパルdeux』でファンの前にお披露目されたものの、ほとんど活躍の機会がないまま1年が過ぎようとしていた。その頃には、2期生のなかでも堀未央奈が『バレッタ』でセンターに抜擢され、北野日奈子が選抜入りを果たしていたのだが、怜奈はこれといった結果を残していなかったのだ。

 「堀ちゃんや(北野)日奈子は自然と光が当たるキャラクターだと思うんです。だけど、私の場合は自分で動かないと光が当たらない人間なんだろうなって。だから、『16人のプリンシパルtrois』では自分から動こうと思いました」。怜奈は自ら変わろうとしていた。

 2014年6月、『16人のプリンシパルtrois』では悪の女王のルイーダに立候補し続けた。そして、千秋楽では人気も実力もある橋本奈々未と若月佑美との争いになった。この日までの公演で活躍してきた橋本と若月の激突にファンは熱い視線を向けていたが、怜奈は強引にその視線を自分に向けようとした。

 自己アピールで「橋本さんが『最高のルイーダを見せる』と言っていましたが、10役に選ばれたことがない私は未知数です! 負けません! ぶっ潰します!」と言い放ったのだ。結果こそ出せなかったが、「山﨑怜奈」という存在を示すことには成功した。

 後に「だだでさえ影が薄くて知名度も低いので、何か残さないと『いたの?』と思われちゃう。嫌われようが何か言わなきゃいけないと思ったんです」、「演技経験もなくて人気もない私がどこで勝てるかと言ったら、自己アピールしかないと思ったんです」と語ったように、怜奈には「叩かれるかもしれない」というプレッシャーが重くのしかかっていた。今でも『プリンシパル』のことを思い出すたびに涙が出そうになるという。それでも一歩踏み込んだのだ。

 2015年3月、10福神以外の乃木坂メンバーによる『じょしらく』のオーディションが乃木坂ファンの見守るなかで行われると聞き、怜奈は「チャンスだ」と思ったという。研究生から正規メンバーに昇格はしたものの、他の2期生にソロ仕事が入ってくるなかでモヤモヤした想いを抱えていた怜奈は「オーディションに受かっても落ちても、私の存在を誰かの脳みそに焼き付けたい」と決意した。

 「影が薄い」と思っている怜奈は自分から前に出ることに苦手意識を持っていた。しかし、自分だけを見てもらえる瞬間があるなら、必死な姿を見せて誰よりも輝きたい。怜奈はそんな想いでオーディションに臨んだ。


乃木坂46『命は美しい』

 そして、オーディション本番で怜奈が見せたのは、覚えてくる必要のないセリフをあえて頭に叩き込み、台本を持たずに役を演じきる姿だった。ただ丸暗記しただけではない、その臨場感のある演技に観る者は感嘆の声を挙げたのだ。結果は合格。怜奈はただのビックマウスじゃなかった。

 オーディションの時のことを彼女に尋ねると「自分でも何をやったか覚えてないんです」と語った。普段は自信がなくて、神経質な部分もある怜奈だが、舞台に立つと吹っ切れてしまうという。2期生オーディションの特技披露のように、役が憑依していたのかもしれない。

 『16人のプリンシパルtrois』から1年……6月18日から『じょしらく』の本番がはじまる。怜奈は「舞台がはじまってから何が生まれるのかワクワク感でいっぱい」だという。

 昨年12月13日に有明コロシアムで行われた『アンダーライブファイナル』では、アンダーメンバー全員が1曲ずつセンターを務めるという試みがあったのだが、怜奈は学業の関係でアンコールのみの出演となり、メンバーのなかでただひとりセンターに立つことができなかった。

 悔しかった。私だって真ん中でスポットライトを浴びたかったと、人知れず涙も流した。そんな想いを溜め込んできた怜奈は、『じょしらく』本番で観客の脳みそに自分の存在を焼き付けるに違いない。

乃木坂46『命は美しい』

大貫真之介 アイドルとお笑いを中心に執筆。乃木坂46写真集『乃木坂派』、『EX大衆』、『TopYell』、『日経エンタテインメント』、『an an』アイドル特集号、などで乃木坂46のインタビュー記事を担当した。

RECOMMENDED おすすめの記事