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最高を超える伝説の一夜へ、大阪☆春夏秋冬 大阪ワンマン「イチハチ」ライブレポ

2015年10月26日 07時00分

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 関西の音楽シーンで名高いライブハウスの「ESAKA MUSE」は、オールスタンディングでMAX400名を収容し、生半可な集客力では埋められないハコだ。そこを舞台に10月18日、東京ワンマンライブ「ハチハチ」の成功という勲章を引っ提げて、大阪凱旋を果たす彼女たち。今やシーンの最前線に浮上しつつある「大阪☆春夏秋冬」(略称:しゅかしゅん)である。

 その人気は本物なのか、ハチハチの成功は夏の一夜の夢ではなかったのか。残念ながら前売り券の売れ行きは決して芳しくなく、メンバーのツイッターには連日、「チケット買ってね!」というお願いが連ねられていた。少女たち7人の肩には、あまりにも大きなプレッシャーがのしかかっていたのである。
 

客入れを前にロビーにて。左下から舞奈、恵園、杏菜。左上から由奈、瑠奈、里奈、茉奈。このポーズは四季折々の花、すなわち春夏秋冬を表わしている。

 地元・大阪では、4月28日のライブで170人を集めたのが最高記録。当時は涙が出るほど嬉しかったものの、ここではキャパの半分にも満たない。せめて半分は埋まっていてほしい。そんな悲痛な願いを抱きながら、7人はステージの裏側でスタンバイした。緊張が少女たちの心臓を掴み、鼓動が速すぎるビートを刻む。お互いに背中をはたき、円陣を組んで気合いを入れる。

 意を決してステージに飛び出した彼女たちの目に映ったのは……あのハチハチの時と同じ、フロアを埋め尽くす人、人、人だった。その数、350人。後方の関係者ゾーンを考慮すれば、事実上の満員札止めである。
 

終演後の記念撮影を見れば、イチハチが満員の観客に祝福されたことは一目瞭然である。ESAKA MUSEを埋められるアーティストはなかなかいないはずだ。

 驚きと喜び、そして戸惑いを感じながら、彼女たちはガムシャラに踊った。幸いだったのは、オープニングがダンスパフォーマンスだったこと。ひたすらに肉体を躍動させ、ほとばしる汗が、目から流れ出ようとする余計な水分を吹き飛ばす。
 

グッと腰を下ろしての華麗なムーブは、ダンススクールを母体としたグループという出自を感じさせてくれる。

目もくらむような速さのスピン! こんな高難易度のコンビネーションもさらりとこなすのがしゅかしゅんの基礎体力なのだ。

 やがてステージは暗転し、ボコーダーを通した特徴的なコーラスとともに「イチハチ」は幕を開けた。

♪ Oh I can hide, you can hide, like chamaeleon.

 そう、彼女たちは自由自在に姿を変えてみせる『カメレオン少女』。この日初めてしゅかしゅんを体験した観客は、そのダンスと歌声を目の当たりにして、「これが噂の大阪☆春夏秋冬なのか!」と、度肝を抜かれたことだろう。すでにしゅかしゅんの魅力にはまったオーディエンスは、早くも拳を突き上げる。ここに充満する熱気には、汗臭いロックのテイストがかなりの濃度で含まれているのだ。
 

メインボーカルの舞奈が高らかに歌うなか、他のメンバーたちは縦横無尽に予想のつかないフォーメーションを繰り出す。まさに変幻自在なカメレオン少女たちだ。

野郎ども(と女性たち)が、何かを求めるかの如く、ステージに向かって腕を突きだす。

 続く『戸惑い』はハチハチで初披露されたばかりの曲。小気味よいギターに昭和テイストのメロディアスな歌声が乗り、まるで夜の御堂筋のような喧騒をイメージさせる。メインボーカルの舞奈が他のメンバーを誘惑するような仕草は、初見の客に戸惑いを与える。初っ端からいろんな引き出しを見せるしゅかしゅんは、すでに場を支配したかのようだ。
 

『戸惑い』で見せる脚上げのムーブは、バレエのアラベスクか、はたまた上段後ろ蹴りなのか。高いダンススキルがステージの熱さを裏付ける。

舞奈が茉奈に顎クイ! そんな男前な姿を見せつけられたオーディエスはまさに、クラクラするような戸惑いを感じざるを得ない。

 2曲を終えてここで最初のMC。彼女たちの自己紹介は上手から下手、そして上手と、左右交互でしゃべるのが特徴だ。加えて自分の年齢を言うのも習わしで、この日は16歳の由奈、15歳の瑠奈、17歳の杏菜、17歳の里奈、17歳の恵園、17歳の茉奈、そして17歳の舞奈の順番に自己紹介が進んでいった。

 それぞれが抱負を口にするなか、恵園が「最高の日を更新して伝説の日にします!」と宣言。東京ワンマンの「ハチハチ」は確かに最高のライブだったが、それを超えていかないことにはしゅかしゅんの明日は来ない。自分たちで上げたハードルを絶対に超えてみせる。そんな決意をもって、彼女たちはこの日のライブに臨んでいるのである。
 

実にいい表情で満員の観客に応えるメンバーたち。杏菜と由奈のポーズは「イチハチ」だ。

ハチハチを超えると宣言した恵園はさっそく、感涙で顔をくしゃくしゃにする。他のメンバーから「早いよ!」と突っ込まれるものの、実際には全員が心のなかで落涙していたはずだ。

 MC後は、軽快なポップナンバーが2曲続く。まずはジャクソン5のカバー『I Want You Back』。洋楽テイストはしゅかしゅんを彩る大きな要素の一つだ。ダンスもポップさにあふれ、原曲はマイケル・ジャクソンが歌っているが、しゅかしゅん版には女子らしい可愛らしさが詰まっている。
 

『I Want You Back』でサブボーカルをとる杏菜。舞奈の歌唱力ばかりに注目が集まるが、3度や5度のハモりを自在に操るコーラスワークの巧みさも見逃せない魅力だ。

 続いては、シンセの奏でる重厚な和音にガムランのような効果音を乗せたブリッジが流れ出す。アジア風ダンスを思わせる優美な動きでゆっくりと腕を曲げ伸ばしし、それが30秒ほど続いた後、全員が「アチャーーッ!」と叫んでブレイク。舞奈が「ハッ!」とシャウトしたらそう、ゴダイゴのカバー『MONKEY MAGIC』だ。

 記者の私見だが、『MONKEY MAGIC』で見せる空気を切り裂くような鋭角的なダンスは、しゅかしゅんの数ある特徴的なムーブのなかでもひと際、オリジナリティにあふれた傑作だ。どのアイドルにも似ていないその動きが、彼女たちの個性と格好よさを際立たせる。未見の人はぜひ、YouTubeで公式PVをチェックしてほしい。
 

どこかバングルズの『Walk Like an Egyptian』を思わせるようなテイストの振り付けにも、しゅかしゅんらしい洋楽テイストが垣間見られる。

空間を切り裂き、引き寄せる。そんな攻撃的なムーブが観る者の目を惹きつける。日本ポップス史に燦然と輝く名曲『MONKEY MAGIC』に、新たな解釈を加えた必聴・必見の一曲だ。

英語の歌詞も流暢に歌いこなす舞奈。決して英語が堪能なわけではないが、その耳の良さでサウンドとしての英語を完璧に取り入れ、自分の解釈をもプラスして歌い上げるのだ。

 左右対称のフォーメーションで曲を終えると、ステージには5人が残り、「あいうえお作文」のコーナー。観客からお題を募り、イチハチをテーマに作文を作るというもの。ここで指名された観客から出されたお題は「さ」だ。

里奈 “さ”っさせっせと
茉奈 “し”あわせいっぱいの
恵園 “酢”まみれみたいな
瑠奈 “セ”ミみたいにみんなで叫んで
由奈 “そ”わそわともしながら頑張りましょう!

 客席からは「“す”がおかしいぞ!」とのツッコミが入る。というか、“し”以外は全部おかしい気もするのだが、メンバーが見せる明るい笑顔とハニカミが、幸せな空間を作り上げていた。曲中では激動のパフォーマンスを見せ、一転してMCではゆるく剽軽な姿を見せる。このギャップがまた、たまらないのだ。

里奈から順にあいうえお作文を披露。観客から募ったお題が最初、ア段ではない“し”だったのは秘密だ。おそらくは、しゅかしゅんの頭文字を意識したものと思われる。


次ページでは、イチハチの隠し玉企画「しゅかしゅん劇場」を大紹介!
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タグ: 大阪☆春夏秋冬 

          

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