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UPDATE|2015/12/27

武藤彩未。活動休止前ラストライブ、それはつかの間のサヨナラ

武藤彩未 X’:mas Special LIVE「A.Y.M.X.」@赤坂BLITZ ライヴレポート 2015.DEC.23

 武藤彩未が、今年を締めくくるクリスマスライブを恒例の赤坂BLITZで行った。急きょ活動休止を発表し、当面これが最後のライブとなった当日の模様をお届けする。
 


 今年もあと1週間と押し迫ったクリスマスイブイブの天皇誕生日。大きなツリーに彩られ、クリスマスムードに包まれた赤坂サカスエリアにあって、ライブ会場となる赤坂BLITZ周辺はちょっと特別な雰囲気が漂っていた。ちょうど1週間前のテレ朝配信番組LoGiRLにおいて、武藤が同ライブをもって活動一時休止することを発表したのである。ライブ活動によって少しずつファンの数を増やし、先月にはプロデューサーの本間昭光氏の生誕50年イベント「本間祭2015~これがホンマに本間の音楽祭~」に出演して新たなるファンも獲得。2016年に向けて勢いも加速させた矢先での活動休止発表である。武藤は「次のステップに上るための前向きな休止」と説明したが、ファンの心情はここ1週間、不安に包まれ浮き足立っていた。

 武藤が今後どのような期間を経てファンの前に戻ってくるのか。休止期間は短期間なのか、それとも1年を超えるようなものになるのか。いずれにせよ、これで当分の間、武藤のライブを見ることはできない。チケットの売れ行きは当日券が出ないほどとなり、物販の列も寒い中早朝から長蛇の列となった。

 武藤にとっては慣れ親しんだ会場である赤坂BLITZ。ステージは下手よりベース、ドラムス、キーボード、ギターと機材が並ぶ。天井からは無数の星の飾りが吊され、クリスマスムードを演出している。17時40分、続々と観客が入場する中、武藤自身がDJを務める「彩未ラジオ」がスタート。LoGiRLでのパートナーである清野茂樹氏を相手に、武藤が最近聞いているプレイリストを紹介するという趣旨のプログラムが場内に流される。

 武藤お気に入りの洋楽・邦楽の楽曲が流され、4曲目に紹介されたのはスピカの夜の『SPICA』。武藤とはかつて可憐Girl’:sでともに活動していた島ゆいかと、さくら学院の卒業生で後輩の飯田來麗のユニットで、フロアからは歓声と手拍子も起きた。そして12月は武藤の周りで誕生日を迎える人が多く、ライブ当日が17歳のバースデーであるさくら学院の後輩・佐藤日向を祝してハッピーバースデーが歌われ、フロアのファンたちからも「おめでとう!」の歓声が上がった。

 さて、武藤の敬愛する松田聖子の楽曲から紹介されたのはシングルヒット曲『ハートのイアリング』。武藤が松田聖子の楽曲を好きになったきっかけの曲で、イントロを聴いただけで惚れたとのことだ。武藤は、松田聖子の楽曲でカバーライブをやりたいと願望を語って拍手をもらった。

 そして最後の曲は、武藤にとって音楽を始めた原点の曲。「この曲があったから今の自分がある」と語る可憐Girl’:sの『Over The Future』だ。「今の私も言い聞かされているようで、強くならなきゃと思える」と語る同曲が流されると、フロアはまるでライブが始まったような盛り上がりを見せた。

 30分を超えるラジオ形式でのDJはここで終了。18時14分、そのまま続けてライブ突入だ。武藤は「(今日のライブは)いつもより長いんですよ、最初からとばしていきたいと思います!」と宣言してライブをスタートさせた。

 いつも通りナウシカのテーマに合わせ、場内は大きな手拍子。その中、バンドメンバーに続いて武藤が姿を現すと、場内は割れんばかりの大歓声に包まれる。サンタ風の赤い衣装に小さなとんがり帽子姿がキュートな武藤。ライティングに照らされた天井の星たちがキラキラとカラフルに輝く。

 最初の曲は『ミラクリエイション』。温かく幸せな気分になれるサウンドで、まさにクリスマスが似合う曲だ。いつものようにライブが出来る喜びに満ちあふれた笑顔の武藤。緊張からか、声が少し震えているようだ。そんな武藤を勇気づけるように、フロアはファンの手拍子で包まれる。

 ノンストップで次の『Doki Doki』へ。ファンのかけ声も大きくなり、グリーンのレーザー光線が飛び交う『Daydreamin’:』では早口の歌詞を大人っぽく歌い上げる。いつもより少し妖艶な雰囲気の武藤の姿に目を奪われる。

 セカンドアルバムからの3曲でフロアを温めた武藤の最初のMC。「すっごい緊張したけど、皆さんの顔を見れて、やっと今現実を見てます」と語ると、場内は笑い声に包まれる。そして、「悲しくないけど、泣いちゃうかも知れない。その時は放っておいてください」と笑いを誘い、「皆さんも泣きたいときは泣いてもいいんだよ?」と続けて拍手をもらう。

 「今日はいつもより長いです、オリジナル楽曲全部詰め込んできました!」と盛り上げ、『Seventeen』がスタート。何かが始まる予感に包まれたワクワクするような楽曲。武藤のキュートで元気なダンスをフリコピするファンも多い。

 透き通るような青いライティングの下で始まった『宙』。浮遊感のあるキーボードサウンドに乗せて、サビの部分をしっとりと歌う武藤。ゆったりとしたパートでの感情の乗せ方も、いつの間にか大きく成長したと感じる。宇宙空間の広がりを思わせるようなライティングの中、武藤の歌の世界へワープさせられるような錯覚を覚える。いつの間にかこんな素敵なライブ空間を作り出せるようになったんだなと、心にこみ上げてくるものを感じる。

 そして『未来へのSign』がスタート。「届けたいのは涙じゃなくサヨナラじゃなくSmile」と歌う歌詞は、まさに今の武藤の心の内をそのまま歌っているようで、目頭が熱くなってくる。いつの間にか武藤の頬も涙に濡れている。このライブを区切りに活動休止に入る武藤だが、それはつかの間のサヨナラ。その先に明日があるんだとわかっていても涙がこぼれてくる。「未来からのGOOD BYE MY DAYS」と歌い宙を指さす武藤の明日は、きっと彼女と彩未ファミリーとで再会を喜び合える希望に満ちたものとなるハズだ。


次ページは、武藤からファンへ、クリスマスプレゼント!

「アイドルやめるわけじゃない」活動休止への想いを語る

 場内が暗転し、荘厳なオルガンのイントロが始まる。『時間というWonderland』が始まると、衣装チェンジした武藤が現れる。カラフルな色使いのワンピースに青いベルトという姿に歓声が起きる。これから武藤はどんな四季を廻って未来の自分に出会う旅をするのだろうか? そこには不確かな地図しかなくても、必ず次なるステップへの大きな成長を遂げた武藤がいるのだろうという、確信めいた気分がわき起こってくる。続く『女神のサジェスチョン』では冒頭の歌詞を間違え、「やっちゃった!」という感じで悔しそうな表情をする武藤。どんなに成長しても、相変わらずこんなドジな一面も時々見せてくれる武藤がたまらなく愛おしく思えてしまう。

武藤彩未『I-POP』

 MCではチェンジした衣装をぐるっと回って披露。背中には大きな可愛らしいリボンがついている。そして「全然しんみりじゃないです、ここは違います」と笑わせた武藤は、今日がさくら学院卒業生である佐藤の誕生日であることに改めて触れ、「そしてもうひとり、大事な人が、今日じゃないんですけどね、26日の誕生日はnishi-kenさん!」と、キーボードのnishi-kenを紹介する。26日と言えばさくら学院で武藤と同級生だった松井愛莉の誕生日だろうと、フロアの父兄たちは苦笑いだ(笑)。そして今日2度目のハッピーバースデー大合唱でnishi-kenを祝う武藤とファンたち。

 そしてここで、武藤からファンに歌のクリスマスプレゼント。「私のクリスマスソングと言えばぜったいアレ。大好きな人の曲です」と言って紹介したのは松田聖子の『Pearl-White Eve』。落ち着いたアコースティックギターの旋律から始まる、大人の恋を歌ったクリスマスソング。結婚・出産を経た松田が87年発表した楽曲を、今の武藤らしく爽やかにちょっぴり切なく歌い上げた。

 ここからはマイナー・メロディの楽曲が続く。失恋のやるせなさを歌った『桜 ロマンス』、そしてこの世の無常観を武藤の透明な声で表現した『とうめいしょうじょ』。明るいライトがフロアを照らす中、もの悲しいピアノのイントロで始まる、“泣く&rdquo:ことをテーマにした『風のしっぽ』は、今の彩未ファミリーの心にグッと染みこんでくる楽曲だ。

 MCで武藤は、「おわかりだと思いますが、ここからはアゲていきたいと思います」と元気に宣言。手拍子の中4人のバンドメンバーを紹介し、「A、Y、M、アヤミ!」とステージもフロアも一体となってコールし、『RUN RUN RUN』に突入。タオルを振り回してライブはクライマックスへと突き進む。武藤の楽しそうな顔が印象的だ。『A.Y.M.』では頭上で腕をAYMの形にして盛り上げ、フロアはもうお祭りのような熱さだ。拳を突き上げ汗だくになって応援する彩未ファミリーの姿に武藤も満足げ。

 『交信曲第1番変ロ長調』も手拍子、彩未コールとフロアの熱は上がりきったまま。声を枯らして「交信!交信!」と叫ぶファンの姿はどれも最高に楽しげで、ラストライブという悲壮感は感じられない。『パラレルワールド』では「まだまだ終わりませんよ!」と叫ぶ武藤に「ハイハイ!」と応えるフロア。「一点突破!」と叫ぶ一体感は最高に気持ちいい。続けてノリノリのロックナンバー『HAPPY CHANCE』。ライブにはうってつけの軽快な楽曲で、「この指止まれ」と歌う武藤が差し出す指に、フロア全体が人差し指を立てて応える。

 曲が終わり、「楽しい!」と叫ぶ武藤に大歓声が起きる。続けて「いやあ、終わりたくないね」と本音を漏らす武藤に、フロアからは「もう一度最初から!」という声も聞こえてくる。誰もがずっとこのまま楽しい時間が終わらなければいいのに、そんな思いを抱いている。

 「先日はとてもビックリさせてしまって申し訳ございません」と謝る武藤。突然の活動休止発表に、ファン皆が驚き、悲しんでしまった。そのファンたちを目の前に、武藤が心の内を語り出す。「本当に私は前向きです。これからもっと良い歌を届けられるように。そのための時間だと思っています。必ず変わって帰ってくることが、彩未ちゃんよかったと言ってもらえることだと思うので。ここからがスタートです」と、あくまでも前向きな武藤の言葉に拍手が起きる。

 武藤彩未は、休止期間を経てどう変わりたいと思っているのか。アイドルをやめ、アーティストになるのだろうか。そんな疑問にも武藤は率直に答えてくれた。「Twitterでは伝え切れてなくて……。アイドルやめるわけじゃないんですよ?」。その言葉にフロアからもようやく笑いが起きる。

 「ずっと松田聖子さんに憧れてステージに立ってきて、あんなに元気、幸せを届けられるアイドルって最高だなってずっと思ってます。でもここからが問題。私はホンモノになりたいし、アーティストとしても勝負できるアイドルになりたんです!」そう言い切る武藤に大きな拍手がわき起こる。彼女が憧れる松田聖子という存在。80年代を代表するスーパーアイドルである。アイドルとして優れているだけでなく、キャリア途中からは作詞・作曲も手がけるようになり、結婚・出産という休止期間を経た後は、アイドルともアーティストとも言える領域へと進化していった。武藤もそんな存在になりたいのではないか……彼女の言葉を聞きながら、そうした思いも浮かんできた。

 「今まで全力できたけど、ここからは全力だけじゃなく、そこに強い思い、経験を乗せて自信を乗せていい歌を届けていきたいと思ってるので、お別れではないです。これからも武藤彩未をよろしくお願いします!」と宣言。フロアは大きな拍手で包まれ、「待ってるよ!」のかけ声がとぶ。鳴り止まない拍手の中「皆さんのおかげで渋谷公会堂に立つことが出来て……でも私の夢は武道館です!」と言い切った武藤に、もう一度大きな拍手が起きた。

 本編最後の曲は『永遠と瞬間』。ピアノをバックにしっとりと歌い上げる武藤の歌唱は、どこまでも凜々しく、どこまでも澄んでいる。誰もが、この瞬間が永遠ならばいいのに…そう思えるような歌声だ。過去最高と言われた10月のライブ「A.Y.M. Ballads」をも超えてしまうような今日のライブ。これだけのライブができるのに、それに満足することなく更に上を目指そうとする武藤の姿勢を眩しく思う。活動休止期間を作ってまでもたどり着きたい高みが、武藤彩未にはあるのだ。それがどれだけ高くて険しい道のりなのか、ファンは想像するだけである。だが、どんな高い壁でも、武藤彩未なら乗り越えてくれる、一回りも二回りも大きくなって彩未ファミリーの前に帰ってきてくれる。そんな確信めいた思いが胸一杯に広がっていくのを感じた。温かい拍手と声援に包まれながら、舞台を去って行く武藤。アンコールを求める手拍子とコールが場内に鳴り響いた。

次ページは、ファンからのサプライズに思わず涙

次のステップへ向かうため、武藤彩未の“旅立ちの日&rdquo:


 ウエディングドレスのような純白の衣装に着替えてステージに戻ってきた武藤。「私は本当に前向きです。だから、これからに向かって、皆さんともっと一つになれればいいなと思ってこの曲を用意しました」。まさに今のファンの気持ち、そして武藤の思いにピタリと重なる曲『明日の風』。アコースティックギターの美しいアルペジオに乗せて歌う武藤の声がファンの胸を震わせる。「今日の君が、悩んでる君が、明日の風を吹かせるんだ」その歌にファンたちは、頬を流れる涙を止められなくなってしまった。腕を左右にゆっくりと振りながら、「ラララ~」とシンガロングするフロア。

 そして『彩りの夏』が始まる。手拍子と目一杯の彩未コールで盛り上げる彩未ファミリー。季節は冬。冬から春へ、そして夏へと移ろいでいく。そのどこかでまた会える。そんな希望に彩られた夏が必ず訪れる。その思いに微塵の疑問も沸いてこないほど、武藤の歌はどこまでも前向きでファンを元気づけてくれる。

 2コーラスとブリッジが終わり、サビへと向かう直前、バンドの演奏がスローになり、場内が暗転する。すかさずフロアのファンたちが一斉にサイリウムを取りだし、腕を突き上げる。入場時に配られた、サプライズ用のサイリウムである。「ワオ!」と驚きの声を上げた後、絶句してしまった武藤。サビを歌い出すが、声にならず両手で顔を覆ってしまう。すかさずファンたちが一斉にサビを歌い出す。大合唱に支えられ、何とか最後を歌いきった武藤に大きな拍手が起きる。

 「泣かないでここまでこれたと思ってたのに!」と頬に涙を光らせた武藤。「今日は絶対忘れられない日です。ここからが新たなスタートなので、皆さん一緒に一歩進んでくれてありがとうございます!そしてこれからもよろしくお願いします」、その言葉に温かい声援がとぶ。最後にオフマイクで「皆さんのことが大好きです!」と叫ぶ武藤にファンの手拍子とシンガロングが鳴り止まない。

 客電がついても、ファンはもちろん誰も帰ろうとしない。まだ1曲残っていることをわかっているのだ。新たな始まりの予感しかしない、何とも前向きな終わりの曲『OWARI WA HAJIMARI』だ。戻ってきた武藤は嬉しそうに「まだ時間大丈夫ですか?」と尋ねる。大歓声で応える彩未ファミリー。この曲こそが、武藤にぴったりな、皆が笑顔で帰れる曲だ。武藤の思いに応えるように、フロアも目一杯精一杯の手拍子とかけ声で盛り上げる。最後は皆笑顔で「サヨナラ!」と手を振り、武藤の新たなる旅立ちを盛り上げることが出来た。そんな満足感がフロアにも満ちている。「また会おうね!」とステージを去って行く武藤に、手拍子はいつまでも鳴り止まない。

 まだ帰りたくないファンたち。そして武藤自身、帰りたくない気持ちは同じなのだろう。わき起こる彩未コールに誘われるように、もう一度ステージに戻ってきた武藤。「泣いてるけど悲しいわけじゃないですよ? 次へのステップが踏み出せたから嬉しいの!」という言葉にまたも大きな拍手が。「私の歌を求めてくれる人が一人でもいる限り、私は歌い続けるって皆さんに約束しました。なので、皆さんが私を忘れない限り必ず戻ってきます。待ってて下さい!」と宣言する武藤の頬にも、ファンたちの顔も涙で濡れている。それが悲しみの涙じゃないことは誰もが皆わかっている。これだけの素晴らしいライブを体験できて泣かない人間はいないのだから。

 武藤とファンの暫しの間のお別れは、さくら学院の卒業にも似ている。それは新たなステップへの旅立ちであり、再び会うときはより大きく、スーパーレディに近づいた姿で僕たちの前に現れるはずだ。その時は、両手を広げておかえりって迎えよう。アイドル武藤彩未第1章の終わりは、アーティストとしても勝負できるアイドル武藤彩未第2章の始まり。今日の熱いステージはそんな未来へのSignなのだ。武藤が帰ってくる日、その宙には明日の風が爽やかに駆け抜けるハズだ。

武藤彩未『I-POP』

セットリスト
01 ミラクリエイション
02 Doki Doki
03 Daydreamin’:
04 Seventeen
05 宙
06 未来へのSign 
07 時間というWonderland
08 女神のサジェスチョン
09 Pearl-White Eve
10 桜 ロマンス
11 とうめいしょうじょ
12 風のしっぽ
13 RUN RUN RUN
14 A.Y.M. 
15 交信曲第1番変ロ長調
16 パラレルワールド
17 HAPPY CHANCE
18永遠と瞬間
アンコール
19 明日の風
20 彩りの夏
ダブルアンコール
21 OWARI WA HAJIMARI

 
竹崎清彦 アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。

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