コラム

アイドルライブ考―演出装置としての「観客の存在」

2014年04月11日 19時00分

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「みなさんの熱い声援に後押しされ、いつも以上に全力を出すことができました」
 
 ライブの最中、しばしばアイドルの口から飛び出すフレーズである。それはファンサービスでもなんでもなく、紛れもない彼女たちの本音であろう。
 
 あえて断言すれば、アイドルライブにおけるエンターテインメント性は、確実に"観客の熱気"が作り上げている。プロ野球やサッカーなどのスポーツ興行と同様、同じアイドルを愛する(応援する)他のファンとの一体感を味わいたくてチケットを買っているファンは多いはずだ。もし、無観客ライブをUstreamで観るだけだったら、メンバーがどんなに熱のこもったパフォーマンスを繰り広げたとしても、味気なさは免れないのではないか。
 
 では、各アイドルグループの〝応援事情〟は、どうなっているのか? アイドル版の浦和レッズサポーター(熱狂度)や広島カープ、千葉ロッテ応援団(統一感)はどこかを検証してみよう。
 
 まず、客席の熱気という意味で現在もっとも注目されているのは、チームしゃちほこ。ももいろクローバーZや私立恵比寿中学と同じスターダストプロモーション所属だけに、2グループとファン気質も相似。合いの手やコール&レスポンスを矢継ぎ早に入れていくファンのテンションの高さは、初見だと度肝を抜かれるだろう。熱の入ったステージングとのシナジー効果で、会場は独特の狂騒的磁場に包まれていく。
 
 横浜アリーナでの解散公演まで3ヵ月を切ったBiSも、ライブの客席熱量は相当なもの。ファンのことを研究員と呼ぶのはLUNA SEAのSLAVEを連想させるが、実際、グループに対する忠誠心の高さは感動すら覚えてしまう。BiSはハードロック調の楽曲が多いこともあり、ステージダイブやサークルモッシュが頻出するのも大きな特徴である。
 
 BiSと同様にハードコア・パンクさながらのライブの激しさで知られるのは、しず風&絆。彼女たちの場合、客席にダイブするのみならず、なんと観客の上を練り歩いてしまうのだ。冷静に考えると、ここでセクハラまがいの蛮行が起こらないのは奇跡的だといえる。運営サイドとファンの間で、美しい共犯関係が結ばれているのだろう。
 
 一方、さくら学院の父兄(ファンの総称)は、紳士・婦女として有名だ。現在のアイドルシーンで主流となった握手会などの〝接触〟がないため、ガツガツしていないのだ。そのためライブ中は、まるでお嬢様のピアノ発表会を見守るようにして、背筋をピンと伸ばしながら鑑賞。椅子席におとなしく座って声援を送る応援方法は、かなり特異に映るかもしれない。
 
 現在はハロー!プロジェクトを卒業したため、アイドルかどうかは意見が分かれるところだが、真野恵里菜とマノフレ(ファンの総称)の関係も、絆の固さでは人後に落ちない。北朝鮮のマスゲームを連想させるほど統制の取れたマノフレの動きは、それ自体が立派なパフォーマンスのよう。また、マノフレはどういうわけか高齢のファンが多いことでも知られており、若いピンチケ層に疲れたファンの憩いの場としても機能しているようだ。
 
 ……その他、48系とハロプロとiDOL Streetの客層の違いなど、挙げていったらきりがないのだが、つまるところ、ファン気質というのはグループの数と同じだけ存在しているといっていい。MIX、ケチャ、フリコピなどのいわゆるヲタ芸文化も、各グループごとに細かく差別化されているはずである。
 
 そして客層の変化に関して、見逃せない事実がある。グループが巨大化するとき、ファンの濃度が薄まるという現象だ。
 
 これはPerfumeやAKB48なども通ってきた道で、ライトな新規ファンの大量参入により、濃ゆい古参の応援スタイルが廃れていくのである。場合によっては、そのグループ独自の掛け声などがこの段階で消えることもある。現在、スタジアム級のグループに成長したももいろクローバーZのモノノフ(ファンの総称)も例外ではない。
 
 これを「会場の熱気がなくなった」と見なし、ライブ現場から離れていくアーリーアダプター型ファンもいるかもしれない。だが、応援するグループがビッグになっていくことを願っていた事実を思い出し、ここは心を広く持って応援し続けてほしいものである。なぜなら、それがアイドルファン道というものだからだ。(小野田衛)
 
 
小野田衛 1974年、神奈川県生まれ。出版社勤務を経て、現在はフリーの編集・ライターに。『月刊ENTAME』では主にハロプロとプロレスの記事を手がける。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)。

 
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