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UPDATE|2014/05/20

乃木坂46の日曜日よりの使者・井上小百合の合言葉は「正義」

9thシングルで選抜に復帰したメンバーの中で、もっとも感情を爆発させたのが井上小百合だった。『乃木坂って、どこ?』での発表当日は舞台本番だったため、舞台出演後に知らされたのだが、井上は「……良かった」と突っ伏して泣き崩れた。舞台出演を経てパワーアップした正義の天使がいよいよ選抜に帰還する。

 

 
 中学時代の井上は、家の中でパソコンに向かっているか、漫画を描いているか、大好きな特撮やアニメを観ているばかりで、決してアクティブとはいえない少女だった。そんな毎日を送っていた彼女にとって、TOKYO FMの『SCHOOL OF LOCK!』が本物の学校よりも身近な存在だった。
 
 ある日、『SCHOOL OF LOCK!』でお菓子とコラボしたモデルオーディションが行われることを知り、興味本位で応募したところ見事合格。中学3年生で、埼玉の田舎から初めての東京、初めてメイクをしてもらって撮られた写真には美少女が映っていた。井上は変身した自分を見て、ある決心をする。
 
「広い世界を見たい」、「誰かのために生きたい」、そんな想いで受けた乃木坂46のオーディション。2次の歌審査まで進んだところで、緊張しすぎて歌詞が出てこなくなってしまった。その時、バッグに入っていた『天装戦隊ゴセイジャー』の変身おもちゃであるテンソウダーで「変身!」とアクションをしたところ審査を見事に通過。1996年の『激走戦隊カーレンジャー』以来の戦隊ヒーローマニアである井上は、戦隊に救われたのだ。
 
 乃木坂46に加入してからは1stシングルから連続して選抜入り。しかし、福神に入ることはできず、ブログではそのたびに悔しさを表明していた。いつもモジモジしているように見える少女の胸には炎が燃えたぎっていたのだ。
 
 2013年5月に行われた『16人のプリンシパルdeux』では、西野七瀬と若月佑美の10役に次いで8役を演じる活躍を見せた。実力で結果をもぎ取った井上だが、10月に発表された7thシングル選抜では17人の枠に入ることができなかった。初の選抜落ちだった。
 
 7thシングルの期間は、アンダーメンバーのフロントとして活動し、選抜が動けない時に個人でメディアに出ることも多かった。アンダーを強化することが自分の使命と張り切って結果を出したつもりだったが、8thシングルでも選抜入りはなかった。
 
 それでも井上の正義の心は折れなかった。4月には舞台『帝一の國』に出演。普段の猫背で消極的なスタンスからの変わりように、共演者から「演劇モンスター」と呼ばれるほどの活躍を見せる。井上自身も本物の役者たちからプロ意識を学んだ。この舞台を観た乃木坂メンバーたちは誰もが井上の好演に刺激を受けていた。そして、9thシングルで選抜復帰。
 
 5月17日、名古屋ポートメッセ。渋谷で行われたアンダーライブには参加できなかった井上がステージに立った。これまでのライブよりも大人の佇まいを感じさせたのは、気のせいではないはずだ。メンバーの粋な計らいで『ダンケシェーン』のセンターを務めると、透明感のある声を会場の奥まで響かせた。
 
 9thシングルでは選抜入りを果たした井上は、アンダーで積み重ねたこと、そして、外に出てきて学んだことを発揮するだろう。以前、井上は「正義とは?」との問いに「人から尊敬されることを目的としている偽善者ではなくて、自分が誰かを守りたいと思って行動すること」と答えている。久々の選抜復帰で、ついに正義を実現する時が訪れた。
 
大貫真之介 アイドルとお笑いを中心に執筆。乃木坂46写真集『乃木坂派』、『EX大衆』、『TopYell』、『日経エンタテインメント』、『an an』アイドル特集号、などで乃木坂46のインタビュー記事を担当した。  
 

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