コラム

ご当地で観るローカルアイドルは別物―ひめキュン運動会現地レポ後編

2014年05月19日 20時00分

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 5月4日に愛媛・松山で開催された、ひめキュンフルーツ缶定期公演「春の大運動会」。ひめキュンのメンバーとファンが5組に分かれ、各競技で競ってきた運動会も、最後はリレーで雌雄が決される。

 ここでは1位に100ポイントが加算されるということで、実質このリレーで優勝が決まることに。まだ種目に参加していない選手と、各チームから選抜された選手、それに団長であるメンバーが参加。赤組は小さい女の子が第一走者に。果たして他の走者は多少なりとも手加減するのかと思いきや、残酷なまでに各走者が本気の疾走! この空間にいるファンならぬ選手が、皆気分は小学生に戻ってしまっているのだから致し方なし!

 黄組が大差をつけて、ラスト走者の奥村団長に繋ぐ。2位と1周近くの差がついていたので、ラスト走者(各チームの団長であるひめキュンメンバー)は2周が課せられているとはいえ、奥村団長が余裕のゴールイン。ここまで、数々の試練を与えられてきたフェアプレーが信条の黄組だったが、最後は「正義は勝つ」とばかりに大団円の逆転優勝。そんな中、赤組の第一走者の女の子が、自分のせいでリレーに負けたと思い込んだのか泣いていると、他の赤組の選手達と共に、その頭を撫でながら慰める岡本団長の姿も美しく印象的だった。

 ライブの最後を飾るのは、ひめキュンのライブに欠かせない名曲『バズワード』、そして『例えばのモンスター』。特に『例えばのモンスター』では広いスペースを活かしての、空前絶後に大きなサークルを作ってのオーイング。そこから定番である、オタがステージに猛ダッシュしての、メンバーのコールが、この広さだからこそ許されるはっちゃけ具合で、春の大運動会を終えるのに相応しい盛り上がりとなった。

 結果発表では1位が発表されるや、黄組が飛んで叫んでの大はしゃぎ。そして奥村団長を囲んでの真友里コール。何がもらえるでも、得することがあるわけでもないのに、大の大人たちの、この無邪気な喜びよう! アイドルってやっぱり凄い!! 盛り上がりの輪の中心である奥村団長は少し戸惑っていたようなリアクションではあったが……(ちなみに、何となく黄組視点の文章になってしまいましたが、あくまでネタですよ!)。

 これで終わると思いきや、余ったTシャツをメンバーがステージ上から全て投げまくって大放出。しかも何十枚単位! 最後の最後まで、どれだけ盛り沢山なイベントなのだろう。
 

競技、ライブ、競技、ライブと盛りだくさんの内容だった「春の大運動会」

 ところで、ひめキュンフルーツ缶の、グループとしての最大の武器は何か。自己紹介もMCも最小限に抑え、アップテンポなロックサウンドの曲を、激しいダンスとともに畳みかけるように歌い、踊り、その疾走感から生み出される興奮と感動。運動会前日の2014年5月3日まで僕はそう思っていた。

 しかし、この春の大運動会では、1種目終わるごとに2曲ライブという構成。何曲も畳みかけることにより生まれる疾走感という、最大の武器と思っていたものをもぎ取られたイベントということになる。それなのに、そこにあったのは、いつにも増した圧倒的な楽しさと興奮と幸福感だった。

 ひめキュンのメンバーと一緒に無我夢中で長縄を飛んだり綱引きしたりしてハイタッチした後に、全力でステージ前に押し寄せる。曲が始まるや、一瞬で興奮は頂点に達し、皆がスペースを活かしてフリーダムに踊りまくりつつ、でもピースフルな一体感。メンバーと一緒に競技を行なうもファンは特別がっつきもせず、あくまでチームの一員としてその場に溶け込むひめキュン。

 バカバカしくて松山以外ではできそうにないダサいジャージコンテスト。メンバー手作りのお菓子のある意味リアルな味。ヤケクソのようなTシャツの大放出。東京のスタンディングで観る時の息もつかせない興奮とは全く異質の、ゆるい空気の中から生まれるかけがえのない楽しさが、隅々まで満ちていた。

 彼女たち自身も、東京などの他地域でのライブで見せる、「観客のハートを掴んでやる」という闘争心剥き出しのパフォーマンスに比べ、松山でのライブはその張り詰めたテンションとはどこか違う、ゆったりとしたパフォーマンスの気がした。手を抜いているという意味ではない。松山の人にだからこそ見せられる姿、もしくは松山まで来ている人にだからこそ見せられるリラックスしたほのぼの感、漂う雰囲気を見せてくれるのだ。

 どちらの方がいい、とかそういう話ではない。ただ、遠征時には観られないひめキュンの姿が、松山では観られる、というのは確かである。「ご当地アイドルはそのご当地で観てこそ」というお馴染みの言い回しがあるが、それが一般論として成り立つのかは分からない。ただ、ひめキュンに関してだけ言えば、松山で観るのと他で観るのとは別物である、と自信を持って断言することができる。

 もちろん、それはライブだけの話ではない。松山という街全体からひめキュンを感じることができるからでもある。松山市駅を降りて、銀天街の入り口を見れば、大きなモニターにひめキュンが映っているし、銀天街を歩いていれば、看板、テレビ、タイアップ店舗などであちこちにひめキュンの姿を見ることができる。

 ホテルに戻ってテレビをつければ、ひめキュンのCMが流れてくる。女子高生の口から「ひめキュンが~」という言葉が耳に入ってきたこともあるし、ひめキュンTシャツを着てお店に入ったら、「ひめキュン好きなんですか? 誰推しなんですか?」と聞かれたこともある。

 実際、松山の人たちみんながひめキュンを熱心に応援しているわけではないだろうが、街全体から温かく見守られている、そんな雰囲気を自然に感じ取ることができるのだ。松山の、特別なそんな空気感を味わってから観るひめキュンのライブ。それが東京で観るものとは別物に感じられるのも当然だろう。

 だからこそ、ファンはここでしか観られないものを求めて頻繁に松山を訪れる。全力の疾走感だけじゃない、松山という地元だからこそ見られるひめキュンの魅力。ファンを松山に惹きつけてやまない理由はそこにあったのである。

■ひめキュンフルーツ缶公式サイト
http://himekyun.jp/
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