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UPDATE|2014/06/17

乃木坂46・中元日芽香の「ひめたんびーむ」はアイドルの証

乃木坂46の中で誰よりも「アイドル」を貫いてる〝ひめたん〟こと中元日芽香。目元にピースサインを添えて繰り出す「ひめたんびーむ」は、相手をキュンキュンにする必殺技だ。中元はただかわいいだけのアイドルではない、小学生の頃から鍛えてきた歌やダンスの実力を兼ね備えている。しかし、乃木坂46では選抜経験が少ないメンバーのひとり。そんな彼女が苦悩の果てに得たモノとは。

 

 
 小さい頃、「目立つのがあまり好きじゃなかった」という中元は、母親から勧められたダンススクールに乗り気じゃなかったという。実際、スクールに入った時は同年代の生徒には経験者が多く、悔しい思いをすることも多かった。しかし、ダンスよりも歌に力を入れるようになると、パフォーマンスの楽しさに目覚め、いつしか中元の心には「歌やダンスでいろんな人を元気にしたい」という気持ちが芽生えはじめた。
 
 乃木坂46に入ってからの中元は、歌やダンスの技術に加えて「常にアイドルでいたい」という意識が強くなる。中元にとっての「アイドル」とは、普段から気を抜かずにプライベートを見られても「かわいい」と思われるような存在。メンバーから茶化されることがあるリボンについても、中元にとって「アイドルらしさ」のひとつなのだ。
 
 筆者が感じる中元の「アイドルらしさ」は内面から滲み出る「かわいらしさ」。インタビュー中も無邪気な表情で「エヘヘ」と笑い、喧嘩を表現する時は「パンチ、パンチ、パンチ」、齋藤飛鳥が演奏したドラムを表現する時は「チャーン」「ドンドンドン」と、漫画の中でしか見ないようなオノマトペを自然に発するのだ。
 
 しかし、乃木坂46に入ってからの中元は苦悩の日々が続いていた。歌やダンスが未経験のメンバーが多い中でも、なかなか選抜に入ることができなかった。スクール時代のダンスのクセが抜けずに、他のメンバーと合わせることにも苦戦する。加入から1年が経った頃には完全に自信を失っていた。
 
 一度は選抜にこだわらず「自分らしさ」を大切にしようと考えられるようになった。しかし、6枚目のシングル『ガールズルール』で選抜に入れなかった時はショックの大きさから、同じ状況にいた衛藤美彩と抱き合ったまま座り込んで立てなくなってしまったという。
 
 7thシングル『バレッタ』で念願の選抜入り。カップリング曲の『やさしさとは』で歌唱力の高さを証明し、番組でバスケのシュートに挑戦した際にはゴールに激突してドジっ娘ぶりを発揮するなどの活躍を見せた。
 
 次のシングルで選抜に残ることはできなかったが、中元はアンダーメンバーになっても腐ることはなかった。今年4月、氣志團との対バンライブで乃木團を結成。乃木坂メンバーによるバンドをバックに能條愛未とのダブルボーカルで観客を沸かせたのだ。その低音がしっかり出る伸びやかな声は、アイドル「ひめたん」とのギャップもあって力強さを感じさせた。乃木坂46の中では自分の色を出して歌う機会が少なかったが、ついに「自分」を出すことができたのだ。定期化しつつあるアンダーライブでも、ボーカルの柱として活躍することだろう。
 
 光が見えてきた中元だが、5月30日~6月15日まで行われていた『16人のプリンシパルtrois』ではもどかしい日々が続いていた。6月12日の時点で主要10役に選ばれていなかったのだ。とはいえ、選んだ役に立候補者が多かったり、本人のまっすぐな性格が災いしたり、決して演技力に難があるわけではなかった。
 
 6月13日、ようやくチャンスが回ってくる。この日の公演では、激戦区ではなく一騎打ちとなった。相手は、同じ年齢で生田絵梨花を含めて〝中3組〟を結成し、3人でカラオケに行ったこともある斎藤ちはる。プリンシパル序盤の勢いを取り戻したいちはるも本気の真剣勝負だ。
 
 コントのお題はタクシー。運転手役(ボケ)の中元は「バックミラーを見てください」と促すと「ひめたんびーむ!」と先制攻撃。その後も、「ひめたんは……」、「エへへ」と〝ひめたん〟を出し切った。他のメンバーがモノマネで笑いをとるなか、なかなか弾けることができなかった中元だが、「ひめたん」という武器で観ている者を幸せにするコントを作り上げ、最後は盟友と腕を組んでペコッと頭を下げた。
 
 投票の結果、中元は役を獲得(祝福のコメントを出すも複雑な思いから涙を流したちはるの姿も忘れられない)。そして、第二幕では初の10役とは思えない安定した演技とアドリブで観客を沸かせる。アドリブのひとつとして『13日の金曜日』をアドリブで歌った。この日は「13日の金曜日」だったが、同じ曲名のセンターである斉藤優里は、奮闘むなしく第二幕に出られなかった。中元には一緒にアンダーを経験してきた優里の分も、という思いがあったのだろう。
 
 第二幕最後のシーンでは、ひめたんへの敬意を表してか出演メンバー全員がひめたんびーむを飛ばした。その後は2公演連続で第二幕に出演。ひめたんはスロースターターだったようだ。この経験は中元にとって大きな糧となることだろう。
 
 中元には生田にだけ話している将来の夢があり、その夢は叶った時に明かしてくれるという。それはアイドルである〝ひめたん〟の夢なのか、ボーカリスト中元日芽香の夢なのか。いずれにしろ、彼女ならゆっくりでも叶えてくれるはずだ。

 
大貫真之介 アイドルとお笑いを中心に執筆。乃木坂46写真集『乃木坂派』、『EX大衆』、『TopYell』、『日経エンタテインメント』、『an an』アイドル特集号、などで乃木坂46のインタビュー記事を担当した。    

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