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UPDATE|2014/06/24

乃木坂46・伊藤万理華がいつかアイドルの概念を覆す日

今月15日まで上演されていた『16人のプリンシパルtrois』。8日夜はセンターの西野七瀬が体調不良で休演になったのが、2曲を披露する第3幕で西野の代わりにセンターに立ったのは伊藤万理華。8thシングルのアンダーメンバーによるライブでセンターを務めたことでの抜擢だった。この日はアクシデントによる緊急対応であったが、このフォーメーションが近い将来に再び実現する時がくるかもしれない。万理華はそれだけの可能性を秘めたアイドルなのだ。
 

 万理華は、カメラに笑顔を向けることも映ることも苦手な少女だったが、人前でバレエのダンスをすることは好きだったという。自分の想いを傾ける対象がバレエから乃木坂46に移ると、カメラにどう映るのかを研究して、自分にしか出せない表情や空気感を出していきたいと思うようになった。とくに表情筋の豊かさは、乃木坂に入ってからまわりから「いいね」と言われるようになったことで、自分にとっての武器だと考えられるようになる。

 万理華に対する注目度が高くなったのは、乃木坂46のシングルの特典映像として収められているメンバーごとの個人PV。1stシングルの『ナイフ』ではダークな雰囲気の中、同級生の男子より少しだけ心が大人の少女を演じた。演技経験はないはずだが、監督に「万理華ちゃんは僕が言わなくても演技ができていた」と言わしめた。

 2ndシングルの個人PV『デート前日の気持ち』では、初デートを控えて迷う気持ちを隠せない万理華が突如として歌い出す。歌には苦手意識があったが、自分のことを書かれた歌詞とポップで手作り感のある曲に乗せられ、普通の子とは少しズレた伊藤万理華を表現することに成功する。

 3rdは抑えたトーンのナレーションが印象的な韓国旅。4枚目では初対面の外国人とペインティングを通して交流した(こちらでもオリジナル曲『近くでテレホン』を歌っている!)。乃木坂46には、西野七瀬や若月佑美、深川麻衣といった絵を描くのが得意なメンバーが多い。そのため、中学時代は美術の成績がずっと5だったという自分の画力をアピールすることを抑えていたという。だが、この頃から少しずつ絵の才能を活かすようになり、昨年9月放送の『乃木坂って、どこ?』でもイラストで『E.T』を見事に再現して見せ、今年4月には映画監督の熊坂出氏による短編小説のメインビジュアルを描き下ろした。

 そして、5thシングルでは、ついに歌だけの個人PVに。学校の廊下から歌いながら歩いて行くシーンを1カットで撮った『まりっか’17』は観る者を虜にした。今年2月22日に横浜アリーナで行われた2周年ライブでは、休憩中に歌唱パートがある個人PVがビジョンに流され、その最後に突如として万理華が登場して『まりっか’17』を披露。1万3000人のファンを歓喜させると、PVと同じように逃げるように捌けていった。

 7thシングルの『万理華』ではシリアスな演技を披露してまた新しい一面を見せた。7月9日に発売される9thの個人PVは、PerfumeのPVも手がけている関和亮による作品で、否が応でも期待値が上がってしまう。すべての個人PVが好評なために、本人はプレッシャーを感じているようだが、「みんなと違うイメージは貫きたい」と思ってようだ。

 個人PVで高評価を受けた効果もあってか、6thシングルで3rdシングル以来の選抜入りを果たすと、7thシングルでも選抜に残る。ただ、大きな結果を残せたとは言い難く、8thシングルでは選抜入りできなかった。だが、丸顔の万理華は、転んでもただでは起きなかった。8thシングルのアンダー曲『生まれたままで』のセンターを務めると、開放感のある曲に合った自然体の笑顔でファンからの賞賛を浴びた。

 センターになったことで自覚が芽生え、使命感に燃えた万理華は、ブログで「アンダーに対しての概念ぶっ壊してやる勢いで頑張ります」と宣言。アンダーのお姉さん的存在の衛藤美彩とは「ライブをするなら『アンダーだから』と思われないようなすごいパフォーマンスを見せよう」と話し合ったという。そして、乃木坂46では初めてとなるアンダーだけのライブをセンターとして成功へと導いた。

 今月28、29日に9thシングルのアンダーメンバーによって行われるライブでも、万理華は万華鏡のようにクルクルと変わる表情で最高のステージを見せてくれるはずだ。そして、いつの日か彼女が乃木坂の、さらにはアイドルの概念をぶっ壊して、乃木坂46に新時代を築いてくれることだろう。
 
大貫真之介 アイドルとお笑いを中心に執筆。乃木坂46写真集『乃木坂派』、『EX大衆』、『TopYell』、『日経エンタテインメント』、『an an』アイドル特集号、などで乃木坂46のインタビュー記事を担当した。    

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